2013年7月アーカイブ

京セラおよびKDDI(旧・第二電電)の創業者である稲盛和夫氏は数々の著書を出されていますが、多くの著書の内容は重複しています。ほとんど同じことを繰り返し述べているといっていいでしょう。しかしながら、その言葉は決して重複しているから退屈ということはなく、読むたびに深く心に染み渡ります。6月に集中して5冊あまりの著作を読んだのですが、稲盛氏の思想に学ぶところがたくさんありました。

稲盛氏の仕事観と人生論は、ひとつの方程式に集約されます。
それがタイトルに掲げた「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」です。
どういうことなのか、実際に検証しつつ紹介してみますね。

この方程式の前提として「考え方」はマイナス100からプラス100までの値、「熱意」「能力」は1~100までの値とします。

いま、平均的な能力50と平均的な熱意50の池田さん(仮名)がいるとします。

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Aさんが平均的な考え方をすると、50×50×50で人生・仕事の結果は12万5,000となります。

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ところが、高平さん(仮名)は熱意も能力も池田さん(仮名)と同じ平均的な50 の力があるのに、組織に不満があったり、仕事を批判的にとらえたり、とにかくネガティブ思考で、考え方がマイナス50だとします。

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するとどうなるか。マイナス12万5,000の結果になってしまいます。

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稲盛氏の解説によると、なまじ熱意や能力が高かったとしても、考え方がネガティブであれば、熱意や能力があるからこそ正反対の残念な結果になってしまうということです。

よくいるタイプだとおもいました。かつて会社に努めていたときの自分もそうだったかもしれません。能力はともかく、熱意だけはあったと自負しているのですが、ネガティブ思考に転じてしまうと、逆に熱意がマイナスのベクトルに働いてしまうんですよね。

さらに、山本さん(仮名)は能力は25 しかないのですが、自分にスキルがないことをしっかりと自覚しています。そこで卑屈になることはなく、自分に能力がないからこそ普通のひと以上の75の熱意を持ち、素直で前向きな75の考え方を持っていたとします。

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計算すると、Cさんの人生・仕事の結果は14万625になります。つまり平均的なAさんよりもすばらしい結果を残すことができる。

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もちろんこれは普遍的な方程式ではなく、稲盛和夫氏の「哲学」を数式化したものです。平凡な人が最大の結果を出すにはどうすればいいのか、ということを考え抜かれて考案した方程式だそうです。この方程式のポイントは次の3つではないでしょうか。

①能力はなくてもかまわない。

「スキルがないから」とか「才能がないから」という理由で人生や仕事を諦めてしまうひとがいます。けれども能力はなくてもいいのです。熱意もしくは考え方でカバーすればいいのですから。

「熱意」がないと感じたひとは、まずは眼前の仕事や日々の生活に没頭してみることです。たとえば、歯を丹念に磨くでもいい。あるいは、挨拶だけは大きな声でしっかりするでもいいのです。そういう「人間の基本」を愚直かつ誠実に遂行することによって、人生が好転することがあります。

②熱意は大切。

稲盛和夫氏は、人間には3種類のタイプがいるといいます。第一に「可燃性」、第二に「不燃性」、第三に「自然性」のタイプです。

「可燃性」というのは誰かから指示を受けたら熱意やモチベーションを高められるひと。「不燃性」は、何か指示されても熱意を燃やすどころか消してしまうような冷めたひとです。クールといえば聞こえがいいかもしれませんが、「そんなの無駄だよ」とか「それって前もやったことがあったけどダメだったよね」などと発言して組織全体の士気を低下させるようなひとでしょう。

「自然性」のひとは誰から何も言われなくても、自発的にモチベーションを高められるひとです。自律的といってもいいかもしれません。自分で課題を発見し、目標を定め、困難に立ち向かっていける人物のことをいいます。

稲盛氏は、自然性のひとであれ、ということを述べています。「モチベーションが上がらない」と愚痴るひとがいますが、正確には「モチベーションを上げられない」というべきであり、みずからを燃やすことができないのは自分に原因があります。ひとから指図されて燃えるのは「可燃性」の人であり、もし自分の人生や仕事で結果を出したいとおもうのであれば、自ら燃える「自然性」の人であることが必要です。

③考え方が人生と仕事を大きく左右する。

考え方の値はプラスからマイナスまでありますが、方程式が掛け算である以上、この値が大きく結果を左右します。稲盛氏が強調されているのは「正しい」考え方です。この正しさとは、世代が変わったとしても正しいと認識されることであり、「天」つまり神様が認める正しさです。決して私欲から生じた正しさではあってならないとします。

「考え方」は「哲学」といってもいいかもしれません。通常、哲学というと、どこか日常生活からかけ離れた役立たないものという認識がありますが、稲盛氏の哲学は実践的なものであり、単なる概念の戯れではありません。このような実践的な哲学を持つことは大事です。

企業において哲学とは「経営理念」といえるでしょう。ジェームズ・C・コリンズ/ジェリー・I・ボラスによる『ビジョナリーカンパニー』では、持続的に価値を生み出す企業の条件として「基本理念」の重要性を説いていますが、しっかりとした哲学を軸に据えた企業は事業がブレないものであり、企業ブランドとしての信頼性も高いといえます

・・・

稲盛氏の方程式から3つのポイントを確認しました。もうひとつ大事なことは、「人生」と「仕事」がリンクしているということ。「仕事」を通じて人間性を高めて、結果として人生を豊かにしていくことが稲盛氏の思想の根源にあります。

「仕事なんて稼ぐための手段だよ」とか「ブラック企業ばかりの時代に社畜になってあくせく働くのは馬鹿じゃね?」という考え方もあるかもしれませんが、要はそういうマイナスの考え方をしていれば自分の人生をマイナスに導いて、勝手に自滅するだけです。

自滅しても構わないのであればマイナス思考に拘泥していればいい。
しかし、自分の人生を誠実に生きようとするのであれば、稲盛和夫氏の方程式から学ぶことはたくさんあります。

■参考図書

4763195433生き方―人間として一番大切なこと
稲盛 和夫
サンマーク出版 2004-07

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4837923100働き方―「なぜ働くのか」「いかに働くのか」
稲盛和夫
三笠書房 2009-04-02

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B00799SNAO心を高める、経営を伸ばす (PHP文庫)
稲盛和夫
PHP研究所 1996-05-31

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4822740315ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則
ジム・コリンズ ジェリー・I. ポラス 山岡 洋一
日経BP社 1995-09-29

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(外岡 浩)

昨日、中島義道さんの『差別感情の哲学』を読了しました。


4062154919差別感情の哲学
中島 義道
講談社 2009-05-15

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中島義道さんはイマヌエル・カントの研究に基づいた独自の思想を展開している哲学者です。その思想には毒もあるのですが、「人間はどうせ死んでしまう」という問いを追究しつつ自分の人生の破滅ぶりを赤裸々に語る誠実さに、多くの愛読者が存在します。好きな著者のひとりであり、関心が高じたあまりに彼が師事している大森荘蔵さんの哲学書まで読み漁ったことがありました。

『差別感情の哲学』では、「自分の信念に対する誠実性を保ちながら、他人の幸福を求めることができるだろうか」というカント的な命題を追究しています。

一般的に「差別は撲滅しよう」と声を荒げるひとも存在しますが、差別感情は人間の持つ自然な感情です。撲滅すべきものではなく、また撲滅できるものではないし、撲滅すること自体が不健全といえます。しかし、この無意識に生じる差別感情を意識化して常に省みることが重要だという考え方に共感しました。 

たとえば日常的に、あるいはソーシャルメディアなどで子供の話をすることがあります。

息子がこんな作文を書いちゃったんだよね、とブログを書く。けれどもその文章は、子供に恵まれない家庭にとって「差別」になるわけです。例えば交通事故で子供を亡くして悲痛に暮れている親が読んだとすれば、心の痛みにさらに追い打ちの棘を刺すような文章として読まれてしまいます。

ただ日常の楽しさを書き綴っただけなのに、その無邪気な言葉によって誰かを傷付けることがあります。本人が意識していなかったとしても、何かを選択するときには別の何かを排除しているわけであり、言葉が形にないものを形にする行為である以上、何かを喋ったとき、書いたときに必ず差別が生まれます。

『差別感情の哲学』では、肯定的な感情である「自尊心」や「向上心」さえも差別になるという考察が新鮮でした。たとえば頑張れる人の発言は、頑張れない人にとっては差別になります。健康であることを語ることは健康ではない人を差別しています。何気ない誇りや向上心の中にも差別感情は潜んでいるのです。

そんな風に考えていくと何も語れなくなってしまうのですが、大切なのは差別的な言葉を語らないことではなく、あらゆる言葉や感情が差別になり得るという可能性を認識することです。いま自分の語った言葉はもしかすると差別を生んでいるかもしれない、誰かを傷付けているかもしれないという自省と点検を欠かさずに生きていくことが大切です。

障害者とすれ違うときに、自分のなかに生じる「ああ、なんか気まずいな」という感情を子細に点検すること。その気持ちを無難にやり過ごしたり、意識から抹消したりせずに、その気まずさを気まずさとして背負いながら生きていくことが「誠実」なのです。誠実に生きることは面倒ですね。

しかしながら、言葉をつむぐ仕事をしている上で、あるいはコミュニケーションのサービスを展開する上で、このような哲学を理解することは非常に重要であると感じました。

いま、少しずつ読み進めている本にエステー株式会社の鹿毛康司さんの書いた『愛されるアイデアのつくり方』があります。


4872905660愛されるアイデアのつくり方
鹿毛康司
WAVE出版 2012-05-08

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著者は、エステー株式会社で「消臭力」などのユニークなCMを生み出したクリエイティブディレクターですが、「CMとは暴力的なコミュニケーションである」と認識されています。

かつて鹿毛さんは、『ムシューダ~テニス篇』というCMを作ったことがありました。それは女子シングルスの決勝戦でプレイヤーが口でラケットをくわえながらプレーしていて、なぜかというと背中の虫食い穴を隠したいためだった、という映像でした。

けれども、このCMを観た身体障害者の方からクレームを受けます。この世の中には道具をくわえなければ生活できない方がいる、そういう人たちのなかには20歳ぐらいで亡くなってしまう方もいる、その気持ちがわかりますか、悲しい気持ちになりました、という切実な声でした。鹿毛さんは放送を中止しました。

そんな辛い経験があったので、東日本大震災のときには、何か倒れるシーンはないか、津波を連想させるシーンはないか、被災された方々を傷付けるような表現はないかと何度もチェックされたそうです。

こうした自省と点検の行為に深い感銘を受けました。面白い映像を作ればいいというわけではなく、広告が暴力的であるという認識を前提にして、視聴者に起こりうる感情の可能性を考えている。企画の仕事をしていると得てしてアイデアに走りがちになり、面白いからいいじゃん、という安易なノリで仕事を進めてしまうことがありますが、芸術家であればともかく、ビジネスの表現者である以上、このような繊細な自省と点検は必要であると考えます。

とはいえ、傷付けることを恐れて黙ってしまうのではなく、自省しつつ表現することが大事ですね。

コミュニケーションは「相手を変え、そして自分も変える行為」だと考えています。わかり合うとか共感を得るというような生ぬるいものはコミュニケーションではない。コミュニケーションはお互いの存在や価値観を揺るがすような激しいものであり、だからこそ創造的な活動なのです。

(外岡 浩)

傾聴の技術。

ライターあるいは編集者とマーケターに共通する必要なスキルがあります。「取材力」といってもよいのですが、「傾聴の技術」です。

仕事によっては取材をしないライターや編集者もいるかもしれませんが、情報感度を高めるという意味から情報に耳を澄ます力は必要です。「情報に耳を澄ます」は比喩的な表現ですが、ノイズにまみれた情報をフィルタリングして大切な言葉を逃さないようにすることは、まさに「耳を澄ます」行為ではないでしょうか。

「傾聴」は、カウンセリングやコーチングのコミュニケーションスキルのひとつでもあり、漠然と相手の言葉を耳に入れて「聞く」のではなく、ひとつひとつの言葉や相手が何を伝えたいのか真摯に「聴く」ことです。同じ「きく」であっても「聞く」と「聴く」には大きな違いがあります。

聴き取るのは、相手の話す言葉だけではありません。ノンバーバル(非言語)のコミュニケーションとして、身振りや目の動き、表情などを読む(=聴く)ことも大切です。つまり傾聴にあたっては、身体全体を耳にして相手の情報をキャッチすることが求められます。

マーケターに「取材力」や「傾聴の技術」が求められる場面としては、グループ・インタビューやデプス・インタビューと呼ばれる消費者に対する調査の場が代表的なものといえるでしょう。

グループ・インタビューは少人数による座談会形式の調査です。定量的なアンケート調査では発見できない課題の発見などを目的として実施されます。

デプス・インタビューは1対1の調査であり、デプス(depth)という言葉があらわす通り、ひとりの消費者の深層心理を深く探っていきます。消費者に対する理解を深め、インサイト(洞察)を見出すことが目的です。このとき心理学の知識やコミュニケーションに関するノウハウが求められます。

学習院マネジメントグループ監修による『買い物客はそのキーワードで手を伸ばす』では、ハウス食品のシチューに関するデプス・インタビューを事例として、インタビューフローの作成から実際の質問例まで紹介しています。具体的でわかりやすく、とても参考になる本です。


4478014760買い物客はそのキーワードで手を伸ばす
学習院マネジメント・スクール[監修] 上田隆穂/兼子良久 星野浩美/守口剛
ダイヤモンド社 2011-11-26

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この本では、デプス・インタビューでしてはいけないこととして次の6つを挙げています。

① 誘導をしない
② 沈黙をおそれない
③ あいまいな言葉を無視しない
④ 圧迫感を与えない
⑤ 内容が脇道にそれても無理に軌道修正しない
⑥ 非言語的な表現を見逃さない

デプス・インタビューで気を付けなければならない6項目は、ライターや編集者の取材スキルとしても重要なことかもしれません。

取材の際には通常、質問項目を用意するものですが、事前に仮説を組み立ててインタビューを行うと誘導尋問のようになり、結果としてステレオタイプな記事ができあがります。お金を稼ぐことが目的で定型的な記事ばかり安易に生産する「原稿生産工場」であればそれでもいいかもしれませんが、読者に訴えかける深い記事を書こうとするならば、取材相手のなかにある深層心理にまで迫ったほうがよいでしょう。分かりきったことを記事にするよりも、新たな発見を書き起こしたほうが意義があります。

ところで、マーケティングの一領域に「テレマーケティング」があります。要するに「電話による見込み客の発掘」です。

通常、新規開拓営業の電話というと「売り込み」あるいは「御用聞き」と考えるのではないでしょうか。しかし、どちらも効果がありません。

というのは、セス・ゴーディンの言葉を借りれば土足マーケティングというように(彼はこの言葉を従来の広告に対して使っていましたが)、多くの人は、ずかずかと土足で踏み込まれて欲しくもない商品を売り込まれたくないものです。あるいは、「何かお手伝いできることはありませんか?」と漠然と御用を訊かれたとしても困惑してしまうのではありませんか。

テレマーケティングでは、問い合わせの電話であるインバウンドコールに対して、新規営業開拓のための電話をアウトバウンドコールといいます。どちらの電話についても「スクリプト」と呼ばれるシナリオを用意します。要するに、お客様に合わせてスムーズな話ができるように回答を想定し、その答え方と導き方を文章化するわけです。

ソーセキ・トゥエンティワンでは、アウトバウンドコールを「売り込み」ではなく「電話取材」であると考えています。

したがって、商品を売り込みません。

電話をおかけしたお客様の話を「傾聴」し、いま困っていること、力を貸してほしいことの発掘に注力します。特に新しいテクノロジーの分野では明確に需要が存在していることはありません。新しい市場が存在するかどうかという可能性からまず把握する必要があります。だからこそ、強引な売り込みではなく、お客様のなかに潜んでいる気持ちを掘り起こすことが大切なのです。

電話取材なので、聴き取った情報は詳細なレポートとしてフィードバックします。これは、原稿執筆や編集の経験があるからこそできることです。また、取材の前に情報収集が欠かせないように、アウトバウンドコールの前には、市場動向や請け負わせていただいたクライアント様の製品やサービスに対する理解に時間をかけます。というのは、製品やサービスの理解なくして、お客様の需要を掘り起こすことはできないと考えるからです。

マーケティング×ライティングの実績があるソーセキ・トゥエンティワンでは、傾聴の技術を重視し、お客様の需要を掘り起こすアウトバウンドコールを行っています。場合によっては、お客様の課題に合わせた企画をご提案することも可能です。お気軽にお問い合わせください。ご相談は無料です。

(外岡 浩)

「チャンスの女神には後ろ髪がない」と言われます。こんな感じでしょうか。i Pad mini の「Paper」というアプリで描いてみました。


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なんだかアヴァンギャルドな女神さまですね。パンクとか前衛美術とかやってそう。

「チャンスの女神様は珍しい、希少価値だから気を付けなさい」ということではなく、「チャンスはあっという間に過ぎ去ってしまうので、前髪を掴むようなことはできても後ろ髪は掴めない、だからしっかりと好機を逃さないようにしなさい」という意味です。

ネットで調べてみると、この言葉の元となったモデルはギリシア神話にあり、女神ではなく少年の神様のようでした。彼の名前は、カイロス( Καιρός, Wikipedia:カイロス)。前髪が長く、後ろ髪は短い美少年です。そして「瞬足」は履いていませんが、両足には翼が生えているそうです。だからきっと飛ぶように速く走ることができるのでしょう。この神話のことをレオナルド・ダ・ヴィンチがローマ神話の女神と勘違いして使ったため、女神として広がってしまったとする説もあります。

カイロスはギリシア語で「機会(チャンス)」を表すようです。ギリシア語には時を表す言葉がふたつあり、一瞬の時間は「カイロス」であり、過去から未来に流れ続ける永遠の時間は「クロノス」とのこと。

「一期一会」という言葉もあります。「いま」という時間は一生に一度きりのものであり、二度と訪れることはありません。だからこそ出会ったひとたちと過ごす時間を大切にして、一生に一度の機会を大切にしましょうということです。こちらは茶道の言葉で、千利休の弟子である山上宗二が「茶湯者覚悟十躰」に書き記しています。

ビジネスの分野では、First-Mover Advantage ということも言われます。要するに「先手必勝」であり、市場を真っ先に切り拓いた企業が先行者利益を得るということです。

例えば、日清食品の「カップヌードル」はカップ麺という新しい市場を切り拓いたことで不動の地位を得ました。新領域を切り拓いた企業のメリットとしては、話題性があるためにメディアなどで取り上げられやすく、広告宣伝費用を抑えられます。また、一度築きあげたブランドやシェアを追随する企業が覆すためには多大な労力が必要なため、独占的な地位を築くことができます。先行者にはノウハウが蓄積しやすいというメリットもあります。

もたもたしているとチャンスはあっという間に過ぎ去ってしまいます。いまを大切にして、訪れた好機を着実に掴んでいきたいものです。

(外岡 浩)

広告業界のアドマンのバイブルとして親しまれているジェームズ・ウェブ・ヤングの『アイデアのつくり方』は100ページほどの薄い本ですが、この本で著者は「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と断言するとともに、「既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい」と述べています。


4484881047アイデアのつくり方
ジェームス W.ヤング 竹内 均
阪急コミュニケーションズ 1988-04-08

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また、創造的発想のために組み合わせを多く作るには、まず膨大な資料を収集することが重要であると主張しています。つまり知識や情報の引き出しが必要であり、組み合わせる要素が多いほど、たくさんの組み合わせ=発想ができるということです。

インプットなくしてアウトプットはできません。

発想あるいは文章を書くことは、インプットとアウトプットによる「呼吸」のような活動ではないかとも考えます。息を吐いてばかりでは苦しくなってしまう。だから新鮮な空気を吸い込むことも必要です。

いまぼくは原稿を書きながら、書棚にある本を片っ端から引っ張り出して情報を集めたり、インターネットで検索をかけたりしています。プランナーもしくはアイデアマン、そしてライターであるためには、リサーチャーのスキルも必要です。

とはいえ、なかなか効率的な情報収集はできないのですが、情報収集のコツは「直感」にあります。

この辺りを掘ったら金鉱が出てきそうだという勘どころが、結構大事だったりするものです。では、その直感を身につけるにはどうすればいいかというと・・・・・・これはもう日頃から感性を磨く努力をしておくしかないですね。ローマは一日にして成らず。手間暇をかけずにうまくやろうとしても、そんな要領のいいことはできません。

発想の技術としては、ひとつのキーワードを多様に展開することが重要です。展開方法としては、大きく分けると次のような方法を考えました。

①否定
②同義語・類推
③対義語

たとえば、「いまソルティ(塩味)な商品がブームになっている」というキーワードがあったとします。このキーワードを上記の発想のフレームに当てはめると次のようになります。

①塩味はブームではない。
②塩麹が流行っている。ソルティライチ、ソルティレモンという商品がある。
③甘いもの、辛いものが流行っている。

対義語はちょっと厳しいかな、という感じですが、「感性の時代」というキーワードがあったとすれば「論理の時代」というキーワードを生み出すことで発想を広げます。

要するに仮説思考で考えるということで、合っているかどうかは気にしないでください。ブレインストーミングの要諦として、アイデアを否定しないということがありますが、思考のフレームを道具として使い、とにかく発想をストレッチするわけです。

もう少し踏み込むと「レトリック的発想法」もあります。

レトリックは修辞技法と呼ばれる文章の表現技術ですが、これを発想に応用します。やや専門的になりますが、レトリックの一部には次のようなものがあります。

①直喩(シミリー):「~のように」と明示する比喩。
②隠喩(メタファー):明示しない比喩。
③換喩(メトニミー):属性などで代用する比喩。
④提喩(シネクドキ):全体と部分、上位概念と下位概念を置き換える比喩。

よくわからないですね。例えば「リンゴ」を使って、上記の比喩による例文を挙げると次のようになります。

①直喩:夕焼けの色のようなリンゴ。
②隠喩:リンゴのほっぺた。
③換喩:リンゴのコンピュータ(アップルのMacintosh)。
④提喩:秋の味覚を食べる。

最もわかりやすい比喩が直喩で「のような」という言葉を使っています。

隠喩の例は、頬の赤さをリンゴに喩えていて、このときに「リンゴのような」とすると直喩になりますが「のような」を使わない隠喩はより洗練された表現になります。

換喩は、ロゴマークを製品に置き換えています。「村上春樹が好きだ」という表現も換喩で、厳密にいえば村上春樹の小説が好きだということですが、作者で作品を置き換える表現になっています。

提喩は、「秋の味覚」といえば梨やぶどうや栗などもありますが、その全体を表す言葉でリンゴという個別なものを表現しています。

このレトリックをどのように発想に応用するかというと、例えば色や匂いなどの属性で異なったものを結びつけたり、全体を部分で置き換えたりすることで発想を拡げることができます。

例として村上春樹さんを挙げましたが、彼の小説はレトリックの宝庫です(という表現も隠喩:メタファーなのですが)。文学に親しむことも発想を拡げて感性を磨くためのエクササイズになります。

KJ法など発想法の古典的な手法もありますが、手法も大事だとはいえ、とことん考え抜くことが発想力を鍛えるためにはいちばん大切なことかもしれません。

哲学者や発明家には、寝食も忘れて考え抜いたあと、ふっと気が抜けた状態のときにアイデアが生まれるというエピソードが多くあります。トイレやシャワーを浴びているときに、ひらめくことが多いようです。緊張と弛緩のほどよい関係の中からよいアイデアが浮かぶのかもしれません。

(外岡 浩)

折れない心。

窓の外には夏らしい青空が広がっています。爽快感に溢れた朝です。
ブログではお久し振りです。みなさんいかがお過ごしでしょうか。

個人ブログのほうの更新も止まっていますが、日々生きるのにせいいっぱいでブログどころではありませんでした。けれども、短い文章ですが考えたことをエントリにしていきたいと思います。ふたたびブログをリスタートします。

3月に会社を立ち上げてから、おかげさまでさまざまなお仕事をさせていただきました。
次のような仕事があります。

  • 47都道府県のある業界のマーケティングデータ集計とグラフ化。
  • ブログ記事の執筆。
  • PowerPointのテンプレートデザイン(約100件)。
  • 大手IT企業様のEAI製品のホワイトペーパー原稿執筆とIllustratorによるDTP。
  • ビジネスムック向けに大手不動産会社様の取材および原稿執筆と写真撮影。
  • 事業案内サイトのコンテンツ原稿執筆とWordpressによる更新作業。
  • プレゼンテーション資料作成(スライド80枚程度)とスピーチ原稿執筆(2万8,000文字)。

いずれもフリーランスのライターのような仕事が中心で事業とはいえませんが、まずはいただいた仕事を実直にこなしていくことに注力します。そして、最終的にはコンテンツマーケティングのビジネスにつないでいくことができればと考えています。要するに良質のコンテンツを制作できる実力を蓄えて、そのコンテンツを使ったマーケティング支援を手がけていきたい、ということです。進行中ですがテレマーケティングの案件もあり、パーツとして散在している仕事をつなげていくことができればいいですね。

ところで、いま手がけているのは1ヵ月で10万字の原稿を書き上げるビジネス書籍の原稿執筆です。先月は3万字ほどの文章を書き上げたのですが、さらに未知の領域に挑戦しています。この途方もない原稿執筆を達成するためにはライティングの速さや技術も大事ですが、何よりも大事なのは、

「折れない心」

だとおもいました。

どんなに優れた文書作成の技術があったとしても、心が折れてしまったら戦闘不能になります。だからプレッシャーに負けない強靱な心がほしい。

いきなり長距離のマラソンに挑戦しても無理であるのと同様に、日頃から走り続ける努力をしている必要があります。自分に関していえば、長文のブログを書き続けてきたことが大きな下積みになっていると感じました。

膨大な時間を費やして長文のエントリを書いて、こんなことやって何になるのかな?と疑問を感じたこともありましたが、仕事を終えて帰宅して日付変更線が変わるあたりの時間、あるいは日曜日の静かな午前中に、読了した本の感想をはじめとして、映画のこと、音楽のこと、仕事や人生のことなど、いろいろなことに思考を巡らせて無駄に長文のブログを書いていた時間があったからこそ、10万字の原稿執筆もできそうだという自信があります。

ブログは無償のいわば自己投資でしたが、結果として文章でお金をいただけるようになりました。手がけているビジネス書籍は完全に受託仕事で、自分の名前が出ることはないのですが、名前が出ようが出まいが自分が書いたものには変わりがありません。そして書きためたものが自分を成長させる糧になります。また、自分の文章が貨幣経済的価値を生むのは嬉しいものです。

現在、6万字ほど書き上げたところですが、そんなことを考えながら原稿を書いています。原稿を書くことは好きで、やっぱり楽しい。ブログにしてもビジネス書籍の原稿にしても、文章を書いている時間は自分にとって至福の時です。

(外岡 浩)

BOOKS

以下のムックおよび書籍で原稿を書かせていただきました。

4800249368天皇家の食卓と日用品 (TJMOOK ふくろうBOOKS)
宝島社 2015-12-04

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4800246660月とこよみの本
林 完次
宝島社 2015-09-18

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詩の電子書籍です。

B00CPQ6MM2天秤座の彼女 (ポエムピース電詩文庫)
マツザキヨシユキ 外岡浩
株式会社ソーセキ・トゥエンティワン 2013-05-08

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B00CXACOIG小峰に纏わりつくネコ (ポエムピース電詩文庫)
マツザキヨシユキ 外岡浩
株式会社ソーセキ・トゥエンティワン 2013-05-20

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DTMアーカイブス



自作曲弾き語り

ネバー・エンディング・ストーリー(THE NEVER ENDING STORY Cover)