ライターあるいは編集者とマーケターに共通する必要なスキルがあります。「取材力」といってもよいのですが、「傾聴の技術」です。
仕事によっては取材をしないライターや編集者もいるかもしれませんが、情報感度を高めるという意味から情報に耳を澄ます力は必要です。「情報に耳を澄ます」は比喩的な表現ですが、ノイズにまみれた情報をフィルタリングして大切な言葉を逃さないようにすることは、まさに「耳を澄ます」行為ではないでしょうか。
「傾聴」は、カウンセリングやコーチングのコミュニケーションスキルのひとつでもあり、漠然と相手の言葉を耳に入れて「聞く」のではなく、ひとつひとつの言葉や相手が何を伝えたいのか真摯に「聴く」ことです。同じ「きく」であっても「聞く」と「聴く」には大きな違いがあります。
聴き取るのは、相手の話す言葉だけではありません。ノンバーバル(非言語)のコミュニケーションとして、身振りや目の動き、表情などを読む(=聴く)ことも大切です。つまり傾聴にあたっては、身体全体を耳にして相手の情報をキャッチすることが求められます。
マーケターに「取材力」や「傾聴の技術」が求められる場面としては、グループ・インタビューやデプス・インタビューと呼ばれる消費者に対する調査の場が代表的なものといえるでしょう。
グループ・インタビューは少人数による座談会形式の調査です。定量的なアンケート調査では発見できない課題の発見などを目的として実施されます。
デプス・インタビューは1対1の調査であり、デプス(depth)という言葉があらわす通り、ひとりの消費者の深層心理を深く探っていきます。消費者に対する理解を深め、インサイト(洞察)を見出すことが目的です。このとき心理学の知識やコミュニケーションに関するノウハウが求められます。
学習院マネジメントグループ監修による『買い物客はそのキーワードで手を伸ばす』では、ハウス食品のシチューに関するデプス・インタビューを事例として、インタビューフローの作成から実際の質問例まで紹介しています。具体的でわかりやすく、とても参考になる本です。
買い物客はそのキーワードで手を伸ばす 学習院マネジメント・スクール[監修] 上田隆穂/兼子良久 星野浩美/守口剛 ダイヤモンド社 2011-11-26 by G-Tools |
この本では、デプス・インタビューでしてはいけないこととして次の6つを挙げています。
① 誘導をしない
② 沈黙をおそれない
③ あいまいな言葉を無視しない
④ 圧迫感を与えない
⑤ 内容が脇道にそれても無理に軌道修正しない
⑥ 非言語的な表現を見逃さない
デプス・インタビューで気を付けなければならない6項目は、ライターや編集者の取材スキルとしても重要なことかもしれません。
取材の際には通常、質問項目を用意するものですが、事前に仮説を組み立ててインタビューを行うと誘導尋問のようになり、結果としてステレオタイプな記事ができあがります。お金を稼ぐことが目的で定型的な記事ばかり安易に生産する「原稿生産工場」であればそれでもいいかもしれませんが、読者に訴えかける深い記事を書こうとするならば、取材相手のなかにある深層心理にまで迫ったほうがよいでしょう。分かりきったことを記事にするよりも、新たな発見を書き起こしたほうが意義があります。
ところで、マーケティングの一領域に「テレマーケティング」があります。要するに「電話による見込み客の発掘」です。
通常、新規開拓営業の電話というと「売り込み」あるいは「御用聞き」と考えるのではないでしょうか。しかし、どちらも効果がありません。
というのは、セス・ゴーディンの言葉を借りれば土足マーケティングというように(彼はこの言葉を従来の広告に対して使っていましたが)、多くの人は、ずかずかと土足で踏み込まれて欲しくもない商品を売り込まれたくないものです。あるいは、「何かお手伝いできることはありませんか?」と漠然と御用を訊かれたとしても困惑してしまうのではありませんか。
テレマーケティングでは、問い合わせの電話であるインバウンドコールに対して、新規営業開拓のための電話をアウトバウンドコールといいます。どちらの電話についても「スクリプト」と呼ばれるシナリオを用意します。要するに、お客様に合わせてスムーズな話ができるように回答を想定し、その答え方と導き方を文章化するわけです。
ソーセキ・トゥエンティワンでは、アウトバウンドコールを「売り込み」ではなく「電話取材」であると考えています。
したがって、商品を売り込みません。
電話をおかけしたお客様の話を「傾聴」し、いま困っていること、力を貸してほしいことの発掘に注力します。特に新しいテクノロジーの分野では明確に需要が存在していることはありません。新しい市場が存在するかどうかという可能性からまず把握する必要があります。だからこそ、強引な売り込みではなく、お客様のなかに潜んでいる気持ちを掘り起こすことが大切なのです。
電話取材なので、聴き取った情報は詳細なレポートとしてフィードバックします。これは、原稿執筆や編集の経験があるからこそできることです。また、取材の前に情報収集が欠かせないように、アウトバウンドコールの前には、市場動向や請け負わせていただいたクライアント様の製品やサービスに対する理解に時間をかけます。というのは、製品やサービスの理解なくして、お客様の需要を掘り起こすことはできないと考えるからです。
マーケティング×ライティングの実績があるソーセキ・トゥエンティワンでは、傾聴の技術を重視し、お客様の需要を掘り起こすアウトバウンドコールを行っています。場合によっては、お客様の課題に合わせた企画をご提案することも可能です。お気軽にお問い合わせください。ご相談は無料です。
(外岡 浩)