感性と聞くと、一般的に特殊な能力だとおもわれがちだ。
アーティスト特有のもののように聞こえる。
しかし、感性は一部のひとだけに授けられた先天的な能力ではない。
後天的に「鍛える」ことができる。
尾坂昇治さんの『「感性の扉」をひらく秘密の法則』を読んで
目からウロコが落ちるような言葉に出会った。
次のような言葉だ。
感性の正体は実は「データ処理能力」だ。
英語にすると感性は「センス(sense)」である。
センスのいいひとというのは、確かにデータ処理能力に長けている。
たとえば、素敵なレストランを知っているひとは
豊富なレストランのデータから最も優れたものをチョイスする。
ビジネスセンスに優れたひとは
余計な仕事をせずに優先度の高い仕事を迅速に処理する。
「空気を読める」こともセンスだ。
最近、空気を読む風潮を悪しきものとして批判することもある。
確かに同調圧力のような、足を引っ張り合う空気はよくない。
しかし、センスのいいひとは他人の気持ちを敏感に察する。
他人の気持ちに鈍感なひとはセンスが悪い。
空気を読む力もまたデータ処理能力であって、
人間は言語のほかに、非言語(ノンバーバル)でコミュニケーションを行う。
つまり相手の表情、感情もデータのひとつであり
センスのいいひとは一瞬の表情や仕草の変化も見逃さない。
特に接客業では、そんなセンスが最も問われるだろう。
センスのいい店員は、こちらの感情を先読みして行動を起こす。
新しい皿がほしいんだけど、と言う前に「お皿をお持ちしますね」と持ってきてくれる。
お客様の気持ちに対する感度が高いのだ。
センスのいいひとは、相手を気持ちよくさせてくれる。
では、どうすれば感性つまりセンスを高めることができるだろう。
具体的には次の5つの方法が大切ではないかと考える。
1.情報のストックを増やすこと
データが増えると、それだけ情報処理能力も高まる。
ソムリエが繊細な味を見抜くように、他人の感情を繊細に読み取れるひとは
人間の感情というデータのストックが多い。
本を読んだりひとに会ったり、
あるいは成功だけでなく失敗も含めて仕事の経験が豊富なひとは
それだけビジネスセンスが高い。
常に情報感度を磨いて情報収集を怠らないこと。
それがセンスを高める。
2.直感的に優先順位を見抜く
センスの悪い仕事をしているひとは
どーでもいい些末なことに異様にこだわり続ける。
ビジネスセンスの高いひとは、ムダを徹底的に省いて
集中すべきことに全力を注ぐ。
だから高い成果をあげることができる。
大量の情報から重要な情報を直感的に見抜くことが大切。
第6感(sixth sense)も立派なセンスだ。
3.異種のデータを組み合わせる
ジェームズ・W・ヤングや野口悠紀夫さんも書いているが
アイデアは組み合わせである。
大量の情報から異種の情報を組み合わせられるひとはセンスがいい。
「え?そういうのあり?」という驚きを与えられるひとだ。
とはいえ、ただ奇抜なだけではダサい。
要するにコーディネイトの問題で、何を組み合わせたかということに
そのひとのセンスが問われる。
4.新しいモノを柔軟に吸収する
年を取るとアタマが硬くなりがちだが
年齢が若くても自分の価値観に固執するひとはセンスが悪い。
もちろん自分なりの考え方を大事にすることは必要だ。
しかし、まったく新しい何かに出会ったときに
自分にはなかった領域の情報を受け入れられるひとはセンスがいい。
センスの悪いひとは「常識的」だ。
ステレオタイプ(定型)の思考パターンしか持たない。
ときには非常識なものも受け入れられるフレキシビリティ(柔軟性)。
そんなひとには情報も集まる。
5.センサーを磨く
同じ情報を受け取ったとしても
スルーするひとと「あ、これ面白いかも!」とキャッチするひとがいる。
特別なことをする必要はない。
日常生活の至るところにダイヤモンドは転がっている。
それをキャッチできるか見逃すかは、センサーの感度による。
センサーの感度を高めるのは「好奇心」だ。
あらゆるものを面白がれるひとはセンスが高い。
センスの低いひとは、つまらないものばかりみつけてきて
批判することに全力を注ぐ。
感性を磨く方法は他にも考えられるが
とりあえず上記の5つに日頃から気を付けていれば
センサーの感度は高まり、感性を鍛錬できる。
もちろん感覚的ではないロジカル(論理的)な能力も必要だ。
しかし、これからの時代をしあわせに生きていくひとは
センスの高いひとではないだろうか。
ウェブは情報の宝庫である。
この情報の宝庫から素敵なものを見出す。
そんなエクササイズを繰り返すだけでも
きっとデータ処理能力すなわち感性は高められるはず。
(外岡 浩)