2015年6月アーカイブ

新緑の季節を過ぎて、木々の色が濃くなった。

天気のいい日には、
ときどき近所の公園でランチをする。

サブウェイのサンドイッチをひとつ、
350mlの缶ビールを2本。
商店街で調達して公園に訪れる。

木漏れ日の下で味わう
サンドイッチとビールがうまい。
無邪気に遊びまわる子供たちが可愛い。

気持ちがいいので、
そのままベンチでMacBook Air を開いて
スマホとテザリングして
調べ物や仕事をはじめてしまう。

ところがふと気が付くと、
保育園や幼稚園が終わって
周囲はお迎えのママさんと子供たちで
いっぱいだったりする。

場違いな自分は
いたたまれなくなって退散(苦笑)

ところで、緑はもちろん空の青など
ぼくらの世界には色彩があふれている。

しかしながら、この色彩を
きちんと認識できないひともいる。
色盲の方々だ。

私事で失礼するが、亡き自分の父も色弱だった。
赤い色などがグレイに見えてしまう、そんな風だったと記憶している。

色が見えにくい方に、カラフルな世界をみせるために
特殊なメガネを開発しているひとがいる。

YouTubeで紹介されているので動画を。



あるキュレーションサイトで紹介されていたのだが
以下の動画も感動的だ。

はじめて色彩のある世界を体験したお父さんは
感極まってうずくまって泣いてしまう。



グーグルグラスのように
「オーケー、グラス!」と呼びかけると機能するようなガジェットじゃない。
あるいは、AR(拡張現実)をみせる大袈裟なゴーグルでもない。

しかし、色盲のひとにとっては世界を
そして人生を変える、かけがえのないツールである。

こういう研究開発を地道に
しかし着実に実現しているひとは素晴らしい。

仕事ではライティング(原稿書き)はもちろん
デザインも手掛けることがあるので、色について究めたくなった。
そこで図書館で色に関する本を借りてきた。

というのも、水野学氏の『センスは知識からはじまる』という本で
センスは後天的なものではなく、知識を蓄積することで
向上させることが可能ということを学んだからだ。


4022511745センスは知識からはじまる
水野 学
朝日新聞出版 2014-04-18

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色についてセンスをアップさせるのであれば
まず色の科学的特性、色彩学、そしてアートなど
あらゆる色の知識を学び、色に接する機会を増やすことが
重要じゃないか、と考えた。

もちろん美術館に足を運んで
実際に絵画を鑑賞することも重要である。
「なんとなくこの色が好きかも」という感覚に頼っているだけでは
色彩感覚は磨けない。

いろんな本を借りてきたが
『カラー版徹底図解 色のしくみ』は少年心をくすぐる。


4405106789徹底図解 色のしくみ―初期の光学理論から色彩心理学・民族の色彩まで (カラー版徹底図解)
城 一夫
新星出版社 2009-03

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色についてのさまざまな知識が
科学的な側面から心理学、文化まで網羅されている。

光が電磁波の一種である、ということに
なぜかよくわからないが「そうか!」と感銘を受けた。

共感覚と呼ばれる能力を持つ方々がいらっしゃって
音や文章に色を見る。

光も音も波動であるならば
音の波動に色を見ることもあるだろう。

過去に読んだ本ではあるが
共感覚については、次の本が衝撃的だった。


4569771092音に色が見える世界 (PHP新書)
岩崎 純一
PHP研究所 2009-09-16

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きちんと世界の色彩を認識しているつもりでも
もしかすると識別できない色があるかもしれない。

フェイスブックで教えていただいたのだが
以下のようなサイトも興味深い。

見える色の数が、人によって違う!?4人に1人しか分からない「カラーテスト」にチャレンジ!

最近、稲盛和夫氏が私淑されているという
安岡正篤氏の『人生は自ら創る』という本を読んだ。
この本で、京都西陣の優れた染色職人は、
色を2万通りに見分けたと書かれていた。


4569761216人生は自ら創る (PHP文庫)
安岡正篤
PHP研究所 2013-12-04

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ワインのソムリエが味の違いを舌で見抜いたり
フレグランスの調香師が、かすかな匂いを嗅ぎ分けるように
職人となって五感を研ぎ澄ませると
びみょうな差異にも敏感に「分ける」ことができる。

「分かる」とは「分ける」こと
という指摘もどこかで読んだ。
AとBの差異を感知できなければ「分からない」。
緑はただの緑ではない。厳密には、さまざまな緑に分けられる、

という観点から面白いとおもった本は
これも城一夫氏の本ではあるが、『色の知識』だ。


486152251X色の知識―名画の色・歴史の色・国の色
城一夫
青幻舎 2010-05-25

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名画の色、歴史の色、国の色として
さまざまな色のサンプルを提示している。
色とその時代、画家、国家の文化のコンテクスト(文脈)が
解説されている。

感覚的ではあるが、ぼくが歴史の色として
いいなと思った配色は時代の色だ。

まず、古代クレタの色。
ルネッサンス。
淡い色としてはトロピカル・デコ。

画家の色は迷うところだが
ヨハネス・フェルメールの配色は、あらためていいとおもった。
光にこだわった画家である。

そういえば画家のパレットを
公開している記事も読んだ。
パレットそのものがアートであり、絵画と通じる。

Photographic Portraits of Famous Artist's Paint Palettes by Matthias Schaller

ビジネスの側面から考えると
ブランドカラーは企業にとっては重要である。

IT関連企業の仕事が多かったのだが
どうもIT関連企業といえば「青」を使いたがる傾向が多い。

というのは「青」は理知的な印象を与え
クールだからだ。

しかしながら、あらためて考えると
「IT関連だから青でいきましょう」
と提案するデザイナーは、思考停止している気がする。
なーんも考えてないだろ?

ぼくも会社を立ち上げた当初は、
サイトの色を青を基調にしていた。

しかし、途中からオレンジ、イエロー、グレイを
基調にするようになった。

なんとなく選んでしまったのだが
分析すると(理屈を後付けすると。苦笑)
オレンジは生まれ育った静岡県の蜜柑の色であり
得意とするソフトウェアPowerPointのアイコンの色でもある。

要するに、何気なく選んだ色のなかに
これまで蓄積してきた人生と趣向が潜んでいたのだ。
センスというのはこういうものかもしれない。

もう少し意味付けをするならば
オレンジが持つ「あたたかさ」あるいは「陽光のような活力」を
自社のブランドカラーにしたかった。

理知的であったりテクノロジーに詳しいのは
ある意味、自分にとっては前提条件であると考えている。
当たり前なのだ。そうあることは必須。
だからこそ、その色ではない色を打ち出したかった。

また、オレンジはマンセル表の色相環で
180度反対側のブルーの補色になり、
IT系のブルーを引き立たせる色である
と考えることもできる。

とはいえ、PowerPointのプリセット色を利用していたが
あらためてきちんとブランドカラーの定義をしたいと考えた。

色について検索していて面白いと感じたのは
「PLUSCOLORn(プラスカラン)」というサイトだ。
自然界、人工物、CDジャケットなど
さまざまな色と配色を検索できる。


■PLUSCOLORn(プラスカラン)
http://pluscolorn.sub.jp/index.php
150615_pluscolern.png


また、日本の色については「和色大辞典」が参考になる。
緑といっても「萌葱色(もえぎいろ)」「翡翠色(ひすいいろ)」など
さまざまな名称があり、ブンガク的でもある。
色の名前を知っているだけでも、教養になりそうだ。


■和色大辞典
http://www.colordic.org/w/
150615_wasyoku.png


いろいろ色を検討した結果、
ソーセキ・トゥエンティワンのブランドカラーは
クレタ・オレンジ(R:241G:137B:1)
カドミュウムイエロー(R:255G:238B:71)
ゲインズボロ(R:220G:220B:220)
がいいかな、とぼんやり考えた。
しかし「何で?」という裏付けがいまひとつ。

むしろ和色の
蜜柑色(みかんいろ:R:240 G:131 B:0、C:0% M:45% Y:100% K:6%)
向日葵色(ひまわりいろ:R:252 G:200 B:0、C:0% M:21% Y:100% K:1%)
灰青(はいあお:R:192 G:198 B:201、C:4% M:1% Y:0% K:21%)
がわかりやすい気がする。
どこかのタイミングで統一したいのだが。

色は「色香」と呼ばれるように
セクシーなものでもある。

これは、ぼくの感覚に過ぎないが、
ダニエル・ピンクなどの著書から得た知識を下敷きに考察すると
これからの企業は論理的な側面だけでなく
「いかにデザインがセクシーか」ということが
求められるのではないか
、と感じている。

そういえば、Perfumeに
「MY COLOR」という名曲があったっけ。



ブルーカラーとか、ホワイトカラーとか
職業を色で表すこともある。
未来は灰色だと言ったりもする。

とはいえ、あなたの色は
たとえグレイだったとしても
みんなと同じ灰色ではないはずだ。

ちょっと青みがかっていたり
どこかしら暖色系が混じっていたり
グレイッシュパステルの
大人の華やかさがあるかもしれない。

2459b3974cc33d52e5efae2a4363a7c6_s.jpgちなみに、いまELジェイムズの
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の
上巻を読み終わったのだが
あまりに官能的なストーリーで
くらくらしている。

ロマンスグレイのおじさんというのも
憧れています。

グレイ(灰色)という名称だったとしても
そういう年齢の重ね方は、いいとおもう。

(外岡 浩)

BOOKS

以下のムックおよび書籍で原稿を書かせていただきました。

4800249368天皇家の食卓と日用品 (TJMOOK ふくろうBOOKS)
宝島社 2015-12-04

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4800246660月とこよみの本
林 完次
宝島社 2015-09-18

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詩の電子書籍です。

B00CPQ6MM2天秤座の彼女 (ポエムピース電詩文庫)
マツザキヨシユキ 外岡浩
株式会社ソーセキ・トゥエンティワン 2013-05-08

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B00CXACOIG小峰に纏わりつくネコ (ポエムピース電詩文庫)
マツザキヨシユキ 外岡浩
株式会社ソーセキ・トゥエンティワン 2013-05-20

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DTMアーカイブス



自作曲弾き語り

ネバー・エンディング・ストーリー(THE NEVER ENDING STORY Cover)