法人、つまり株式会社としてソーセキ・トゥエンティワンを設立したのが
2013年3月21日。もうすぐ2年目を終え、3年目を迎える。
会社名がトゥエンティワンなので21日にこだわりたかった。
そのためだけに法人登記を急いだのであった(笑)
4月21日でもよかったんだけど
「3・2・1・GO! 」みたいな日付で、なんか気持ちいいじゃないですか。
いま考えると何も考えてなかったなあ。ノリだけだ。
ぼくは「起業しよう!」とおもって会社を設立したわけではない。
起業せざるを得ない状況にあったからだ。
当時、ぼくは失業者だった。
30社以上の企業に履歴書を送付して
ことごとく落ちた。絶望的だった。
家入一真さん的にいえば「居場所」がなかったわけだ。
しかし「居場所がないなら居場所を創ってしまえ!」ということで
精神的に追い込まれた状態で
活路を見出すべく創った会社だった。
会社を創るってどういうことかな?
ということを一生のうちで一度、
経験してみるのもいいか、とも考えていた。
とりあえずスタートは
個人事業主でもよかったのかもしれない。
当時その選択肢は眼中になかったけれども。
多くの中小企業は、3年以内にその8割が廃業する。
そんなことを本で読んだ記憶がある。
何とかしなきゃ!で創った会社だけれど、
最近は思い入れが強くなって、何とか存続させなきゃ!と
考えるようになり、いま融資を視野に入れつつ
税理士さんのアドバイスをいただきながら
事業計画書などを書いている。
痛感するのは
自分には起業家とか経営者のセンスってないかもなあ(涙)
ということだ。いやはや、まったく。
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最近、為末大さんの『諦める力』という本を読んだ。
諦める力 〈勝てないのは努力が足りないからじゃない〉 為末 大 プレジデント社 2013-05-30 by G-Tools |
為末さんは陸上競技のアスリートで
100メートル走という陸上の花形を諦めて
あえて400メートルハードルという分野で成果を出した。
「諦める」は仏教では「明らめる」であり
自分を客観的に見据えるポジティブな考え方であるという。
努力しても叶わない世界がある、と為末さんは言う。
であれば、戦わずして勝つ世界で勝負しろ、と。
マーケティング的にはブルー・オーシャン戦略かもしれない。
とはいえ、努力せずに諦めるのは、いかがなものかとおもう。
安直すぎるじゃないですか。
努力だけでなんとかなるほど世間は甘くない。
企業法人の維持、経営には才能が必要ということは
誰に言われなくとも重々感じている。
しかし、センスや才能がないなら、みっともないほど愚直に努力して
それでもダメなら諦めるしかないけど、いまはまだその段階ではなく
足掻けるだけ足掻いてみようと考えている。
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そんなわけで、事業計画書に
ぴりぴりと敏感になっている昨今。
ふと目に飛び込んできて、これはすげー!とおもったのが
大塚家具の社長、大塚久美子氏の中期経営計画だ。
実の父親との確執で話題にもなったようだが
久美子氏が中期経営計画を発表した後に、
株価が急騰したことでも話題になった。
と、話題を振っておいて脇道に逸れます。
スケールがちいさくなるけれど
「企画書の書き方、プレゼンの仕方」について再確認したい。
企画書には基本的な構成がある。
例えば、プロモーションの企画書であれば次のような感じだ。
01.与件の整理
02.市場背景、外部環境の分析
03.製品またはサービスの強みと弱みの整理
04.基本戦略、企画の方向性
05.ターゲット
06.コンセプト
07.プロモーションの全体構造
08.具体案
09.運営体制
10.展開スケジュール
11.概算予算
2と3はいわゆる「SWOT分析」と呼ばれるもので、
多くの場合、企画書の構成は上記を網羅して作成される。
事業計画書については、また少し違ってくるのだが。
場合によっては戦略的に
最初に予算を持ってきちゃうとか、
いきなりコンセプトからはじめちゃうとか
奇を衒った構成もあり、である。
結局何なの?と早急に知りたいスティーブ・ジョブズみたいな(笑)
お客さまの場合は結末から語るのがいい。
ただ、日本企業の場合、演繹的に説得するのが一般的だろう。
また、前半部分は一方的に語るのではなく
「こういうことでしたよね?どうおもわれます?」
と相手と対話(コミュニケーション)する場としても必要になる。
一般的にプレゼンは、プレゼンテーターが
一方的に提案するものと考えがちだ。
ところが実は一方的に聞かされているだけのお客さまは
フラストレーションをためていることがある。
お客さまだって話したい。
そこで、最初にお客さまと対話することが大切だと考える。
また、前提部分で納得していただければ
スムーズに企画に同意いただける。
「いや、そうじゃないんだけど」と否定された場合は
その後の企画の持っていき方を、即興でアレンジしなければならない。
ただ、後者の場合、お客さまの理解が不完全だったということで
プランナーは反省すべきでもある。
プレゼンは、コミュニケーションなのである。
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だいぶ脇道に逸れました。
ええと、大塚家具の中期経営計画の話でした。
この中期経営計画が優れているのは
分析から具体案の施策まで一貫して戦略が先鋭化され
さらに組織体制の布陣も明確化されていることにある。
分析・施策・組織体制の部分を
公開されているPDFから見ていきたい。
1.分析
第一に日本の家具消費トレンドが
「まとめ買い需要」から「単品買い需要」に推移していることを指摘。
新築住宅の減少という外部環境も分析に入れている。
一方で内部環境の分析として、販売スタイルやブランディングが
「接客に抵抗がある」「高そう」という課題を抱えていることにも触れる。
そして、市場構造の変化をIKEAやニトリという競合と比較して
ポジショニングし、中価格帯に再流入する見込み客を
得るべきであることを強調する。
2.施策
上記の背景の分析を踏まえて、施策に対しては2つに注目した。
第1は、大型店の出店を「北海道」「千葉」「大阪・梅田」という
商圏人口がありながら出店がない地域に絞り込むこと。
ランチェスター戦略でいえば、局地戦だ。
第2は、ユニークな専門店の設置。
住のなかで眠りに特化した「Good Sleep(ぐっすり)Factory」は
ネーミングも秀逸であるし、ぼくも行ってみたいぐらいだ。
照明に特化した「Lightarium-ライタリウム-」は
プラネタリウムにかけた造語だとおもわれるがセンスがいい。
3.組織体制
このような施策を実行する組織として
社外取締役と監査役の候補のスキルセットをマトリクスで表している。
ダイバーシティも考慮して、9人のうち2人は女性だ。
個人的にはもっと女性役員を増やしてもいい気がする。
大塚久美子氏の中期経営計画は見事だとおもった。
感動した。
しかしながら、お客さまとの打ち合わせのときに
雑談でお話ししたところ別の視点もいただいた。
久美子氏は新築需要が減っていることを挙げているが
そのお客さまのご友人が新築の時に、家具を選んでいて
ものすごく悩まれたそうだ。
照明はいろんなものがあり過ぎて、何がよいかわからない。
しかし、大塚家具に行ってショールームをみて
「こんな感じの部屋がいい」と社員に希望を伝えると
その通りにコーディネイトしてくれるので非常に便利だという。
そんなトータルコーディネイトができる家具屋さんは
大塚家具しかない、とのこと。
そこで考えたのだが、久美子氏が徹底的に攻撃する
親父さんの経営戦略にも、あながち問題ばかりじゃない。
そのサービスに感謝しているお客さまもいる。
なので僭越ながら考えたのは
「父親と娘で経営のことで親子喧嘩なんかやめて和解して、
大塚家具は、親子双方の経営者の良さを
共創的に経営に生かしたらいいんじゃないか」
ということだ。
ひじょーに余計なお世話ですが。
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ビジネスは人間が行うものである以上、
論理だけでなく、感情など
複雑な文脈(コンテクスト)が絡み合う。
教科書やマニュアル通りに
いかないものであり
正解も、ない。
独立なんかしないでサラリーマンがいいよ
といわれたら、その通りだとおもう。
いまを生き延びることでせいいっぱいで
現在、ぼくには余裕がない。
しかし、自分の会社を立ち上げることで
とてつもない学びがあった。
自由も感じている。
ささやかだけれど、しあわせでもある。
人生、楽しんじゃったもの勝ちだ。
挫折も失敗も恥も
楽しさの一部。
さて、仕事でもしますか。
深夜なんですけど。
ぼくにはワークライフバランスなんてない。
どこから趣味で、どこから仕事なのかもわからない。
18時間ぐらい働いていることもあるから
とんでもないブラック企業ともいえる(笑)
しかしながら、
いま充分に満足しているし
ハッピーだったりする。
それでいいや、とおもっている。
いや、それがいいな、と。
人生はみずから選ぶものであり
このツラさも楽しさも自分で選んだものだ。
(外岡 浩)