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プリンタを買い換えた。
キヤノンのPIXUS MG7530。


B00N3F47QMCanon キヤノンインクジェット複合機 PIXUSMG7530BK ブラック
キヤノン 2014-09-04

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以前にはやはりキヤノンのip4100を使っていたのだけれど
・かなり古くなってしまったこと
・スキャナが付いていないこと
・息子たちがプリントする必要があったこと
ということで購入。

10年間ぐらい、プリンタを買い換えずに使ってきて
最新の機材を購入および使ってみて驚くことがたくさんあった。
情報化社会の浦島太郎である。

まず、驚くほどの低価格。これはおそろしい価格破壊だ。

某家電量販店で購入したのだが、
ポイントを700円分ぐらい充当して16,740 円なり。

純正インクが約5,000円だったので
インクを買い換えるなら
本体買っちゃったほうがいいぐらいだ。

次に、さりげなく導入されているさまざまな最新技術。

無線LANでつなげることが便利。
配線がごちゃごちゃしなくてすっきりする。

NFCを読み取るので、スマホやタブレットをかざすだけで印刷可能。
いちいちケーブルを接続する時代は
終焉を迎えているのかもしれない。

ファームウエアを無線LANの通信経由で
アップデートすることもできる。

イーロン・マスク氏の率いるテスラモーターズが
クルマの不具合をネット経由でアップデートする時代なわけだ。

IoT(Internet of Things :モノのインターネット)が進展して
いまにアップデートできないのは
人間ぐらいになってしまうなあ、と苦笑した。

ちなみにIoTに関しては、日本テレビ「SENSORS」
女性クリエイター対談の書き起こしがlogmiに載っていて面白かった。

Rubyの女神とも呼ばれる池澤あやかさんが
金魚の水槽にセンサーを取り付けて、
水温が熱くなると「死にそう......」とつぶやく仕組みを
作った話に笑った。

ギーク女優・池澤あやか、IoTの魅力は「植物とか金魚と会話できるところ」-女性クリエイター座談会

ところで。
PIXUS MG7530を購入してから
フェイスブックの右側にあるフェイスブック広告に
PIXUS MG7530の広告が出るようになった。

いや、もうこれ買っちゃったもん、とおもっていると
次には安い機種を表示する(苦笑)

なんだかなあとあきれていたところ、
さらに安い機種を表示してきた。

ひょっとしてバカにしてますか?

Amazonのおすすめ機能が代表的だが
これらはレコメンデーションエンジンと呼ばれる
インターネットの閲覧や記載の履歴をもとにしたデータベースから
推測して表示される。

広告の場合は、DSP広告と呼ばれる仕組みがある。
DSPとは、Demand Side Platformの略で
要するに不特定多数にムダな広告を配信するのではなく
需要(Demand)があるターゲットを選別して
広告効果を最大化、効率化する。

文字からみると一見、消費者に合わせた広告のようにみえるが
DSP広告の需要があるのは広告主だ。
ムダな広告は打ちたくないよね、という広告主のご都合だ。

しかしだな、買っちゃったものを表示しても効果がないだけでなく
何度も何度もレコメンドされちゃうと気分が悪くなる。

だから、アドテクノロジーは嫌われるのだ。

現在のこうした人工知能(AI)の問題は
「空気が読めない」ことに尽きる。

広告を「土足マーケティング」と呼んだのは、
セス・ゴーディンだった。
もう10年以上前の本になるが、以下に書かれていた。


4881358057パーミションマーケティング―ブランドからパーミションへ
セス ゴーディン Seth Godin
翔泳社 1999-11

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現在のアドテクノロジーは
データベース上の履歴や記載から推測するが
人間の気持ちまで読みとる精度は、現在のところはない。
だから「土足」で踏み込んでくる。

だが、最近ネイティブアドに対する批判が高まっているが
「広告なのに広告じゃないようにみせる」人為的な工作をするより
まだ機械のほうが、ある意味、誠実ではないかとも感じる。

補足すると、ネイティブアドとは
各メディアが記事の体裁で配信する広告のことで
インフィードなどさまざまな形態があるが
主要なものは、過去の広告でいえば「記事広告」だ。
言い切っちゃうけれども。

かつて新聞や雑誌などのメディアでは
スポンサーがお金を出して掲載している記事体裁広告は
「PR」や「提供」などきちんと記載をして
「これは記事のようですが広告ですよ」と明示していた。
消費者を惑わせないためだ。

それを一部のデジタルメディアが
「PR」や「提供」を抜いて記事のように見せかけたことが
議論されている。

いっとき問題になった
ステマ(ステルスマーケティング)まがいだということで
眉をひそめたり、怒り狂っているひとがいる。

が、しかし。
消費者からすると、どーでもいいことのようにもおもえる。
なにをそんなに騒いでいるのだ?と滑稽にみえる。

いかにも「買ってくれ!」ビームをびしばし感じるものは
広告だろうが編集記事だろうが、ちょっと引く。

とはいえ、いいものを真摯に丁寧に紹介しているコンテンツに関しては
広告だろうが編集記事だろうが、ふむふむと読む。
それを買うかどうか判断するのは読者(消費者)である。

まあ、早い話がスポンサーがいるなら
「広告」って書いちゃうのが誠実で、それだけのことでしょ。
書けばいいじゃん。誤魔化さずに。

ブランディングは企業と消費者の信頼のきずなであり
企業側から何を発信するかが重要ではなく
消費者のなかに蓄積された信頼が重要になる。

これは『ブランド・マインドセット』という本に書かれている。
誠実さは大切。


4881358669ブランド・マインドセット
デューンE. ナップ Duan E. Knapp
翔泳社 2000-08

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脇道にそれました。広告の話はおしまい。

いまは「空気を読めない」人工知能だけれど
いずれは、学習して精度を上げることで
もしかすると心に刺さるようなオススメをするようになるかもしれない。

そのための技術のひとつが
「機械学習(machine learning)」だろう。

たとえば、ご存じのひとも多いかもしれないが
マイクロソフト社が構築した
年齢と性別を当てる「How-Old.net」が話題になった。

マイクロソフト社の開発者向けイベント
「Build 2015」の基調講演でAzureのデモとして紹介され
Azure Marketplaceの顔認識API、PowerBI、Azure Stream Analyticsを使って
構築したそうだ。

Microsoftの顔写真での年齢/性別当てサイトが人気に(Azureのデモで)

「やだ、私ってばまだ20代?!いや~ん」
女性をよろこばせるために、女性の顔を判別したときには
ちょっと年齢を低めに表示するような
アルゴリズムがあるんじゃないかと邪推する(笑)

Azureのクラウドベースの機械学習は「Azure ML」で、
雌牛の発情期を予測して出産頭数を増やすなど
畜産業でも活用されはじめているという。

牛も「コネクテッド」に--機械学習の力が分かる3つの活用事例

こうして人工知能が発達すると
ある時期にテクノロジーが人間の知性を超えてしまう
そんな時代が到来するかもしれない。

ツイッターで教えていただいたのだが
「シンギュラリティ(特異点)」というらしい。

茂木健一郎氏がGLOBIS 知見録で10分間で60枚ものスライドを駆使して
シンギュラリティを含めた人工知能について解説されている。

テンションの高さに圧倒されるが、このプレゼンは凄い。



シンギュラリティに興味が沸いたので
Amazonでレイ・カーツワイルの本を購入した。


4140811676ポスト・ヒューマン誕生―コンピュータが人類の知性を超えるとき
レイ・カーツワイル 井上 健 小野木 明恵 野中香方子 福田 実
日本放送出版協会 2007-01

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図書館で借りていたのだが、あまりの分厚さに読み切れずに
返却してしまった。しかしやっぱり読みたいので購入。
めっちゃ分厚いのだが面白い。

人工知能の発達を危惧する知識人も多い。
スティーヴン・ホーキング博士をはじめイーロン・マスク氏もそのひとり。
コルタナを開発するマイクロソフト社を創業した
ビル・ゲイツ氏も警鐘を鳴らした。

まさにSFのような状況だ。
21世紀っぽい。いや実際に21世紀なのだが。

スパイク・ジョーンズ監督の『her』という映画のように
人工知能に恋をしてしまうことも現実にありそうだ。



やがて人工知能は
知性だけでなく感性を
そして感情を持つようになるかもしれない。

しかし、そのとき人間の優位性は
生身のからだを持っていることではないだろうか。

五感がデータ化されてクラウドに蓄積されたとしても
いま、自分が感じているクオリア
つまり感覚は自分だけのものだ。

150510_aozora.jpgあなたがあなたであること。
それはいま感じている空の青さだとか
空気のすがすがしさだとか
おいしいご飯だとか
あったかい誰かの掌にある。

だから、カラダを大切にしたい。
というのはそれが人間独自のものだカラダ。

とかなんとか。
お後がよろしいようで。

(外岡 浩)

え?何これすごい!とおもっったYouTubeの動画がある。「忍者女子高生 | 制服で大回転 | japanese school girl chase #ninja」がそうだ。


■忍者女子高生 | 制服で大回転 | japanese school girl chase #ninja


何気ない高校生活のシーン。制服の女の子が笑っている。スマホで撮影したような、わずかに手ぶれ感のあるローファイな映像だ。カメラのなかで、とつぜん女の子たちの追いかけっこがはじまる。その追いかけっこは次第にエスカレートして、バク転したり、高所から飛び降りたり・・・。

彼女たちは「忍者」なのである。

そして最後、さんざん追いかけっこして疲れた砂浜で、バッグから炭酸飲料を取り出す。蓋をあけると、ぶしゅっと飲料が飛び出す。そりゃそうだ。あれだけ回転したり跳躍したり、激しく動き回ったのだから。しかし、このとき、その飲料が「C.C.Lemon」であることにはじめて気付く。「あ、これサントリーのCFだったんだ!」とわかる。

うまいなあ、とおもった。広告と感じさせない広告。まさに「忍者」みたいな広告だ。

逃走シーンが見事な映像としては、何年か昔になるけれど、テイラーという女優がパパラッチから逃げる動画があった。


■Taylor Momsen escapes paparazzi


これも「え?すげー!」という驚きのある映像だ。そして実は、「NIKE(ナイキ)」のCFだった。彼女もまたNinja である。

ところで、「忍者」といえば、こんなコンテンツもあった。


■"忍者女子"との社内恋愛には気をつけろ!
http://jump.2ch.net/?news.livedoor.com/article/detail/8979848/


率直なことを書く。明らかにサントリーの動画と比べると、このコンテンツはダサい。やらせ感が強烈に臭う。クサい。

そもそも不自然な物語、みょうな写真で注目(Attention)を集め、最後に「七変化」するという共通項で東芝の新製品「dynabook KIRA L93」に落とし込むのだが、広告の手法の域を抜け出していない。要するに古典的なティザー広告の一種であり、不自然で陳腐な物語つきの記事広告ともいえる。

最も問題だとおもわれるのは、これは自分だけかもしれないが、ぼくはこの記事を読んで「dynabook KIRA L93」を買いたいという購買意欲が1ミリも起きなかった。だいたい最初で何か胡散臭いものを感じて、きちんと読みさえしないで、ずっと放置していた。読んだのは1ページ目と最後のページである。で、「ああ、やっぱりね」とおもってクリックしてブラウザを閉じた。

コンテンツマーケティングは、面白ければいいってもんじゃないだろう。

広告の主な役割は話題作りによる認知拡大だが、やはり製品(コンテンツじゃなくてね)に興味(Interest)を抱かせ、これ欲しいなという欲求(Desire)や、最終的には「購買行動(Action)」を喚起するものでなければ、膨大なムダである。

たぶん業界の内輪ウケでは盛り上がったんじゃないかとおもう。しかし、陳腐な演出は逆効果でしかない。たとえば物語という演出。物語の重要性はダニエル・ピンクも『ハイ・コンセプト』で述べている。広告における物語の重要性はかなり前から指摘されてきた。しかし、物語に感動や驚きがなく、「やらせ感」や「ただ注目を集めるだけの突拍子もなさ」しか感じられなければ陳腐である。

サントリーの「忍者女子高生」には驚きがある。最後のシーンでぶしゅっと吹き出す「C.C.Lemon」にシズル感がある。「あーこういう風に炭酸飲料を噴射しちゃうことあるんだよね(苦笑)」という共感がある。しかしながら、東芝の「忍者女子」には「こんなやついないだろ」という嘘っぽさしか感じられない。「面白さ狙ったでしょ。でも残念でした。つまらないでーす」という感想しかない。

要するにライブドアに掲載されていた、コンテンツマーケティングを標榜したと思われるコンテンツは、たとえ数万ページビューというアクセスをたたき出したとしても、「なんか変なものみちゃった(苦笑)」という居心地の悪い印象しか残らず、もしかすると「これ変だから見てみて」と拡散しただけだったかもしれない。「なんか忍者の面白いコンテンツあったよね。ええと、あれどこの製品の広告だっけ?」ぐらいにしか感じていないひとも多いのでは。

ライブドアに掲載されたアレは、コンテンツマーケティングを気取った「擬態広告」でしかなかった、と考えている。

擬態広告も広告の一種である。だが、そこには巧妙に閲覧者を騙す不誠実さが潜んでいる。擬態広告に気を付けろ、と警戒を発したい。

面白いだけのひとが軽んじられるように、面白いだけの広告に信頼はない。面白さに釣られて読んだけれど「なんだこれは!売り込みじゃねーか、騙しやがって」と反感をかって、ブランドに傷を付けてしまうことさえあるかもしれない。だいたい、マーケターは消費者の「釣り師」になっちゃいけないのだ。インバウンドのためには、何をやってもいいわけじゃない。誠実さの感じられない薄っぺらな広告にはうんざりだ。

でも、C.C.Lemonの動画はいいよね。アマチュア感の漂う、親近感のある映像に和んでしまいます。

(外岡 浩)

BOOKS

以下のムックおよび書籍で原稿を書かせていただきました。

4800249368天皇家の食卓と日用品 (TJMOOK ふくろうBOOKS)
宝島社 2015-12-04

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4800246660月とこよみの本
林 完次
宝島社 2015-09-18

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詩の電子書籍です。

B00CPQ6MM2天秤座の彼女 (ポエムピース電詩文庫)
マツザキヨシユキ 外岡浩
株式会社ソーセキ・トゥエンティワン 2013-05-08

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B00CXACOIG小峰に纏わりつくネコ (ポエムピース電詩文庫)
マツザキヨシユキ 外岡浩
株式会社ソーセキ・トゥエンティワン 2013-05-20

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DTMアーカイブス



自作曲弾き語り

ネバー・エンディング・ストーリー(THE NEVER ENDING STORY Cover)